破局噴火

 NHK-hiで「スーパーボルケーノ」の再放送をやっている。アメリカのイエローストーンの下にあるマグマ溜まりがカルデラ噴火を起こすという事態を想定した、NHKとBBCの国際共同制作ドラマ。事実イエローストーンは、過去に気の遠くなるような間隔を置いてだが、定期的に超巨大噴火を繰り返してきた火山地帯らしい。その噴火の規模は以前に紹介したインドネシアトバ・カルデラにも匹敵するもので、地球全体に小天体の衝突にも劣らない災厄をもたらすという。
 実は、この破局的な噴火というやつは日本人にも身近なものなのだ。日本中にたくさんあるカルデラ地形も、過去の破局噴火の痕跡。確かにイエローストーンやトバほどの破格の規模ではないが、有史以前には歴史時代の火山噴火を遙かに凌ぐ災厄が繰り返し起こってきたらしい。最後の破局噴火、薩南諸島にある鬼界カルデラの約7300年前の噴火では、九州南部に栄えていた縄文文化が壊滅したと言われている。この先も、いつかは日本列島の何分の一かが火砕流と火山灰に覆い尽くされるだろうことは、ちょっとにわかに信じ難い話だが、逃れられない火山列島の宿命のようだ。→現代都市を脅かすカルデラ破局噴火のリスク評価
 ところで、カルデラ噴火のドラマ化の発想はテレビの独創ではない。このドラマより早く、カルデラ噴火をテーマにした小説が書かれているのだ。石黒 耀著『死都日本』がそれ。宮崎のえびの市にある古い加久藤カルデラが再び巨大噴火を起こすというストーリー。日本中しっちゃかめっちゃかで、最後は民族大移民に至る。昔読んだ『日本沈没』よりも科学的蓋然性が高く、「スーパーボルケーノ」よりもストーリーが緻密で手に汗握る面白さ。火山に興味のある方にお勧めしたい。