春の匂い

 昨日から春の始まりの匂いが感じられる。けっして比喩的な表現ではない。確かに匂いがするのだ。春の始まりの時期に、特有の匂いが数日にわたって漂うのに気づいたのは山歩きを初めてからだが、気がついてみると、山だけでなく家の周りでもその匂いは感じられる。それは一種の悪臭で、何かが腐熟しているような有機的な臭気だ。冬の間、低温で分解されなかった土壌の有機物が、温度が上がって一気に分解する匂いではないかとずっと考えていたのだが、あるいはそうではなく、花の匂いかもしれない。ヒサカキというツバキ科の常緑樹があって、この時期に特有の匂いを放って咲くという。ウィキペディアにはタクワンの匂いなんて書かれている。ぜひ一度その花を見つけて、今では私的風物詩の一つになりつつある、この春の始まりの匂いの正体を確かめてみたいと考えている。