クリスマスローズ

 雑草と落ち葉にまみれたまるで自生地状態のうちのクリスマスローズたち。恥ずかしげにうつむいて咲いているので、花をアップで撮るには這いつくばらなくちゃならない。ふと見ると、犬の糞が転がっていたりするから、上から大雑把に撮っておしまい。
 でも考えてみると、彼らは恥ずかしがっているはずも、うなだれているはずもなく、理由があってそうしているに違いない。花はなぜ咲くのか。それは虫を招き寄せて花粉を媒介させるためだ。虫媒花。春の花は、目立つように空に向かって花弁を精一杯広げ、鮮やかな色と甘い香りで蜂や虻や蝶を誘惑する。ところがこの季節、まだ空にほとんど虫はいない。いるとしたら、枯れ葉のシェルターでまどろんでいた奴が、日溜まりに起き出してうろうろするぐらい? この季節、虫たちにとって一番居心地のいいのは地面。空はまだ寒すぎる。クリスマスローズは、そんな虫たちにアピールするために、地面に向かって大きな花を咲かせる。加えて、花びらを傘状にすることで、この季節の霜や寒さから雄蕊雌蕊を守るという効果も期待できる。もちろん人間のことなんか知っちゃいない。
 クリスマスローズが自生地でどんな虫たちのどんな生態を目当てにしているのかは知らないが、きっとそんなことだろうと想像するのだ。