日和見

 寒さが舞い戻った一日。前夜、車に山道具を積みこんでおきながら、寒くなるという予報を聞いて日和ってしまった。山登りを初めて十年。そろそろターニングポイントに差しかかっているのかもしれない。行けばワクワクする体験ができることはわかっているのだが、身体が億劫がってつけ入る口実を探している。インターネットに数ある登山レポートのサイトを見ていると、年に百回近くも山行をする人もいるようだが、そんな人は山に向かう意識が常にハイな状態でいるのだろう。そして、たぶんそんな人ほど、山だけでなく日常もフル回転しているはずだ。それに引き替え、低回の日々を送っている人間は、昔の大仰なサターン5型ロケットよろしく、思いっきりエネルギーをかき立てないと、地べたから成層圏に達することはできない。そんなカッコいいものではないが。
春近し