閑谷学校


 午後から、岡山のお気に入りスポット、閑谷学校を訪ねる。山陽道備前インターから北へ少し走り、穏やかな中国山地の山ふところに入り込むと、特徴のある蒲鉾形の石垣に守られた、赤瓦の建物群が現われる。大きな講堂をはじめ、孔子廟・神社・正門などの建物は、どれも屋根の反りが少し強めで、瓦の色と相まって、どことなく中国風の雰囲気が漂う。周囲の冬枯れの山のすそは、きれいに刈られた芝の斜面になっていて、いつ来ても静かに整った空気が漂う。かつて菅茶山もここを訪ねているようだが、黄葉夕陽村舎という名前は、あの賑やかな街道沿いの塾よりも、こんな立地の方がよほどふさわしい。
 菅茶山の五言古詩「閑谷」の冒頭。
連岡 ならびて森立し
一路 曲がること弓の如し
幽澗 その傍らを流れ
翠積の中に縈迂す
行く行くしばしば回転し
黌宇 たちまち穹崇
図らざりき粠林窟に
この絃誦の叢あらんとは
 続いて、県道を北上し、旧吉永町に古刹八塔寺を訪ねる。かつては山岳仏教のメッカとして栄えたというが、今は無住の小さな山寺。それよりも茅葺き民家が周囲にたくさん残っていて驚かされる。映画のロケ地にもなったという。村外れにはレトロな可愛い郵便局も。時間が止まったような村だが、観光客目当ての整備がちょっと興ざめ。
吉永町三国郵便局
 最後に町に戻って、地元の耐火レンガ会社が作ったというレンガ広場なるものを見学。広い敷地に、耐火レンガのモデルハウスや、レストラン、レンガの滝や小川、結婚式場まである、ちょっと“パラダイス”チックな空間。どうも半ばは社長の道楽らしい。建物だけでなく、中にも重量感たっぷりのヨーロッパ物のアンティーク家具がばんばん置かれている。レンガ窯焼きピザや自家醸造発泡酒が売りだというレストランで、重厚なテーブルや椅子の感触を楽しみつつ、一休みしてから帰途につく。中国山地の隈々の町々にはまだまだ面白いスポットが隠れていそう。