『ノスタルジア』

 深夜のBSで『ノスタルジア』を見ている。待ちに待ったタルコフスキーの傑作だ。もちろん録画もしている。市販のDVDは画質が悪いというもっぱらの評判だが、この放送は問題なさそう。大昔、出張の折に、映画マニアの同僚に連れられて、東京の名画座で見て以来。筋書きはまったく覚えていないのに、多くのシーンが記憶に残っているのは不思議だ。それだけ鮮烈な影像にあふれた映画。今、廃屋のような狂信者の家での対話のシーン。緑のからんだ窓の向こうに雨が降り注ぎ、その光が明かりのない部屋に反射する。どのシーンにも影像の魅力と深い精神性が同居する。それがたとえ、魅力的なロシア女との一方的ないさかいの場面でも、また泥酔した主人公の透き通った水のなかでの不思議な独白のシーンでも。