弓引き

 今年は村の鎮守社の弓引きの役にあたっていて、着物を着てお宮にでかける。神戸市教育委員会作成の地域の伝統芸能を紹介するページによると、神戸の北区はこの神事が数多く残っている地域らしい。個人的にも興味深いので簡単にレポート。
 11時に全員揃ったら、まず社殿の前で引き役・世話役揃って参拝する。神主の祝詞に続いて、旦那寺の和尚さんも社頭に立って、柏手を打ってから般若心経をあげるのが面白い。まさに神仏習合
 続いて弓引き。本殿と小神という小さなお社、2つの神さんがあるので、午前と午後、6人ずつ2班に別れて引く。射手は着物の裾をからげて、村のお婆さんたちから羽織と袴を履かせてもらう。麻のずいぶんくたびれた羽織・袴で、大正頃から使われているものらしい。頭には烏帽子をかぶる。袴は昔の人の体格に合わせたからか、ずいぶん短い。半袴を履いた太郎冠者みたいな姿。
 午前中は幼稚園や小学校の生徒も見学にやってきて、狭い境内を子どもたちが取り巻いたなかで弓を引く。上手く的に当てれば拍手があがるが、外せば失笑される。自分は午後の部なので、安心して見ている。竹弓はそんなに勁くないが、しっかり引き絞らないと的に当たっても刺さらないようだ。6人が一人4射ずつ引く。弓引き神事には6という数がよく使われると、上記のページにはある。直径1mほどの的には黒目玉の肩にムのないの字が書かれている。同じく上記ページには地域による的のデザインのバリエーションがまとめられていて興味深い。
 引き終えたら昼食。境内にある舞台で燗酒をあおって寒さをこらえつつ仕出し弁当をいただく。さて、自分が引く午後の部。もう子どもたちは帰っていて境内は閑散としている。プレッシャーはないがちょっと寂しいなあ。羽織・袴を履き肩脱ぎになって、茣蓙を敷いた射座に2人ずつ座る。2射ずつ射ては次の組に交代。射るたびに一端を黒く塗った棒を射座の前の砂山に立てる。それを2回やって、最後に1射ずつ流し矢といって上に向けて緩く矢を射る。それを昔は見物の子どもたちが争って取ったらしいが、今は怪我を恐れて子どもが帰ってからやっているという。写真を撮っていた嫁さんが一人チョコチョコ出てきて拾った(^^;。持ち帰って飾っておけばいいという。
 これで神事はお仕舞い。昼酒がえらく回って、帰って夕方まで沈没。
神主とお坊さんが揃って
鬼の的を打って厄を払う
午前中は子どもが見物に
太郎冠者
射座でかしこまる
けっこう様になってるな