感想二つ

其の壱
 各局のニュースで上海万博の話題が喧しい。見ていて連想するのはやはり大阪万博のことだ。40年前とは展示を見せる技術は段違いだろうが、パビリオンの外観の奇妙奇天烈さは昔見た夢だなあ。40年経っても人間の未来のイメージはあまり変わってないようだ。
 当時の日本がそうだったように、イケイケドンドンの国は勢い余って未来の夢を盛大に花火みたいに打ち上げ始めるもののようだ。そして何十年かの経済発展の後に、万博は真夏の世の夢として懐かしく振り返られるだろう。すなわち万博には、国民の意識に将来への漠然たる希望を与えるという以外に大した意味はない。
 つまり万博は純然たる国内向けイベントで、発展段階?の違う他国民にとっては面白いものでも興味を引くものでもない。なのにニュースではわざわざ見物に出かける物好きな日本人も多そうだし、報道でこれだけ取り上げている国もたぶん日本だけだろう。これってもしかしたら、重要な文化はすべて大陸からやってきた、かつての中華文明との関係の復活の始まり?
其の弍
 長谷川敗る。久々に多くの名チャンピオンを輩出したかつてのボクシング全盛期を思い出させる緊迫した試合だったな。確かに一発の怖さを秘めた挑戦者で、そのハンマーパンチをかいくぐってテクニックに勝る長谷川がどう料理していくか、たっぷり楽しめそうな試合展開だったのだが、ラッキーパンチとは言わないものの、出会い頭の一発に沈んでしまった。
 WBCにはもう強い挑戦者はいないと、マイナーな組織のWBOチャンピオンとの何の得にもならない試合を選んだ長谷川のアグレッシブさは称賛されるべきだが、勝てばメジャータイトルが手に入る相手とは土台モチベーションが違ったのではないだろうか。強い相手と白刃を渡るスリリングな戦いを楽しみたいという天才の余裕が仇になったようだ。
 そういえば昔、柴田国明というすばらしいチャンピオンがいて、勝つときはほとんど芸術的な試合でボクシングファンを満足させてくれたものだが、負けるときは今日のようにワンパンチで陥落することが多く、その打たれ弱さがこの人の試合にさらに生彩を添えていたものだ。父親がボクシングファンだったせいで、小さい頃からタイトルマッチとなるとテレビにかじりつきで、今では伝説となった数々の名イベントをしっかり目に焼き付けることができたのは幸せだった。