PlaceEngine

 PlaceEngineという面白い位置検出サービスが公開されているのに遅まきながら気づいた。GPSが搭載されていないノートパソコンなどでも、周辺の無線LANアクセスポイントの情報によって現在位置がある程度推定できるというシステムだ。
 携帯には周囲の基地局から位置を推定する機能があるが、同様の仕掛けで無線LANを利用したパソコン版のサービスがあったとは知らなかった。サイトには、PlaceEngineが位置を推定する手順が解説されていて、かいつまんで引用すると、

近傍のアクセスポイントから流れる電波を観測し、Wi-Fi電測情報 (MACアドレス、電界強度などの情報) として取得
 ↓
Wi-Fi電測情報をサーバーに送信
 ↓
サーバーは、受け取った電測情報と、あらかじめサーバーに蓄えられている電測情報のデータベースとから、位置情報 (緯度経度や住所情報など) を推定し、クライアントソフトに返す
という具合だそう。
 対応エリアを見ると、都市部は面、田舎は高速道路沿い?の線で有効なようだが、どこまでGPSの代わりになるかは分らない。試しにインストールして自宅の位置情報を取得してみると、100mばかし離れた位置になった。電測情報のデータベースというのは「ユーザー参加型で明示的に位置を登録することで位置推定可能なエリアが拡大して行く」そうで、プライバシー的には特に問題ないと思われたので、現在位置を送信しておいた。以後はもちろん正確な位置が示された。
 さて、このサービス、どう役に立つのだろうと考えてみる。たとえばネットブックで位置情報が取得できるのは嬉しいといえば嬉しいが、役に立つ場面はあまりなさそうだ。第一、ネットにつながっていないノートでは、オンライン地図に位置を表示することもできないのではないか。
 一番恩恵を受けるのはiPhoneのような無線LANも携帯網も利用できるスマートフォンのようだ。iPhoneにはGPSがあるから地上ではPlaceEngineは必要ないが、いったん地下にもぐるとGPSは無力だ。けど地下は無線LANが豊富だからPlaceEngineはいい働きをする(らしい)。iPhoneの3GとPlaceEngineで地下街でもオンライン地図上に現在地が得られる(らしい)。
 という次第で、AppStoreにはPlaceEngineを利用したYahoo!地図やセカイカメラなどのソフトが公開され、人気になっていたのだが、これらは先日突然削除されてしまったという。AppStoreの審査基準はかなり恣意的で、自社の事業展開に邪魔なものはあっさり排除されることも多いようだ。Appleが最近アメリカの位置情報企業を買収したためという話もある。うちのiPhoneにはセカイカメラは入っているものの、Yahoo!地図を見逃していたので、この有為なオンライン地図を利用できる機会は失われてしまった。こういうことがあると、iPhoneiPod touchの自由はJobsの掌の上の自由でしかないことを思い出さざるを得ない。