氷ノ山(三ノ丸)


 好天の土曜は3週間ぶりに戸倉コースへ。前回はまだ雪が締まっておらず、ほとんど林道歩きだけで終ってしまったが、その後冬型が緩んで温かい日や雨の日が断続し、もう楽に歩ける雪になっているはず。戸倉トンネル東口から旧道を埋める雪に乗ると、案の定、ほとんど跡のつかない固い雪面で、前回とは段違いに行程がはかどる。昨日のものらしい細板のトレースと、今朝のスノーシューの跡が先行する。強い風が抜けるため雪が飛ばされて土が露出している戸倉峠を越えるのも、いつもの県境尾根への登りの谷に入るのも、前回の半分ほどの時間で。細板もやはりこの谷を上り下りしている。
 2時間足らずで県境尾根に乗ったからには今日は三ノ丸まで行けるのは確実。こうなると少し遊んでみたくなって、ミズナラの巨木林の辺りから尾根を右に外れて、坂ノ谷の源流部に下ってみる。50mほど下るとすばらしいブナの原生林で、谷にはちょろちょろ水が落ちる小滝がかかっている。対岸の登り安そうなところを探して少しトラバースして滝を巻き、板を手に持って急斜面を谷底へ下りる。一つ越した滝の上にもまた滝がかかるなかなか雰囲気のいい源流部だ。
 対岸の中傾斜の尾根は、県境尾根と坂ノ谷コースの尾根の間に半島状に突き出た1337mピークに向けて登るもので、すぐに傾斜が落ちて、ミズナラの大木が点々と現われる。と、この辺りでは見たことのないサイズのミズナラの株に遭遇。三本の幹が合わさって周囲7〜8mはあるだろうか。裏に回ると幹が半ば空洞になっていてずいぶんご老体のようだが、この山域に冠たる迫力だ。その先は伐採が入ったのだろうか、若木の多い緩斜面を抜けて、右手に再び大ブナの群生が現われ、盛り上がった台地の中央に主役然とそびえる天然杉の大木が目を引いたら、その辺りが1337mピーク。一昨年にテントを張ったとき、ここまで足を延ばしたので見覚えがある。
 その先も大ブナのみごとな群生が続き、最後の一群が途切れたら、後はただ真っ白な三ノ丸の大雪原に突入。日射しが雪面を輝かせているが、それ以上にさえぎるもののない寒風が雪を凍りつかせている。黙々と歩いて一年ぶりの三角屋根の三ノ丸避難小屋と展望櫓に到着。そこから眺める氷ノ山本峰も一年ぶり。全体に笹の穂が残り、雪はまだ少なめ。12時半なのに人の姿はなく、氷ノ山方向からわずかに声がするのみ。寒いのですぐにシールをはがして下り始める。
 カリカリにクラストした雪原は腰の引けたスキーでは制動が効かず、おだやかな斜面にあたふた。登りのトレースを追って森に入ると少しエッジが効くが、一度崩れた姿勢は簡単に直せない。もっと重心を前へ前へと叱咤しつつ源流まで下る。登りに渡ったところから標高にして50mほど上だが、ここにも小滝がかかりそれをブナが取り巻く小桃源。それを眺めつつ遅めの昼食。谷を渡って対岸に上がり、エッチラオッチラ壺足で登って県境尾根に復帰。後はいつもの下山コース。林道への下降は谷が南向きで雪が適度に緩んでいて、ふらふら旋回するのが楽しい。林道に下ると今度は雪がカリカリで、こわいほどスピードが出る。前回はほとんど歩いて下った道を、この日はほとんど滑って下った。

県境尾根のミズナラの巨木林

坂ノ谷源流部の滝



三叉の大ミズナラに出会った



三ノ丸から氷ノ山本峰を望む