応挙の虎

 遅い賀状作りで夜なべ。昨年は山の写真を使おうとして、安いレーザープリンターの色の出の悪さにがっくり来て、年に一度の久闊の叙を一部放棄してしまったのだが、今年はいいアテがあった。干支は賀状素材の最も便利なもので、干支がなければこの作業はより面倒なものになったに違いない。もしかしたら年賀状の習慣も定着しなかったかもしれない。
 で、虎とくれば応挙である。いつぞやの展覧会の図録を繰ってネタを探す。けれど、スキャンの手間をかけるまでもなく、某サイトで「虎嘯生風図」の部分画像を発見して拝借。これをさらに切り取って左右反転して、下半分に配置する。上にお決まりの文字を並べれば一丁上がりである。
 それにしても見れば見るほどみごとな虎のバストアップだ。生気があってしなやかで、虎の毛の手触りさえ感じられる。というのも、応挙は舶来の毛皮をもとにこの未知の獣を描いたらしいから、毛の表現には応挙得意の写生が生きている。実は全体を見た時、応挙の虎は、まあ江戸の獣の絵の常として、写生とはほど遠い不自然な姿なのだが、なるほど部分にこそ応挙の虎の真価はあるようだ。