鈴鹿崩れ永源寺温泉

 計画では千種街道を歩いて杉峠を越え、少し下ったところの御池鉱山跡にテントを張って、盛大に焚火をして遊ぶ予定だった。翌日は雨乞岳に登り、笹の稜線を奥ノ畑峠まで歩いて明るい奥ノ畑谷を下り千種街道に戻るつもりだった。加えて、気分次第でイブネ往復も考えていたのだが、八日市インターを下りると鈴鹿は分厚い雲に閉ざされ、近づくと雨も降り始めた。登山口まで入って、一応車中でお昼のサンドイッチなどパクついたが、食べ終わるころには鳩首協議するまでもなく、中止が決まっていた。多くの場合、登山は雨天決行だが、テントと焚火がメインのお気楽山賊山行には雨は禁物である。
 せっかくここまで来たのだからと、山の帰りには高過ぎて敬遠してきた立ち寄り湯で、汗を、ではなく無念の涙を洗うことにする。永源寺の少し下流の愛知川畔に八風の湯なる温泉施設があり、ふつうの立ち寄り湯の2〜3倍の料金を取る。さすがにフロントでは手ぬぐい・タオル・館内着のセットを手渡されて豪勢な気分になるが、風呂自体は規模・種類・風情などを勘案すると中の上といったところ。風呂セットだけで倍はちと無理があろうとぼやきつつ、さして長居もせず退出する。歌手つきの大広間で物を食ったり酒を飲んだり、ごろちゃらできた昔のヘルスセンターが懐かしい。ますます範囲を広げて降り募る初冬の雨の中を、そそくさとそれぞれのカアチャンのもとへ帰った。年内の登山はこれにて打ち止めの公算大。