ヘレボ熱再発

 秋が深まり植物が次々に末枯れて、庭が寂しくなってゆくのに反比例して、存在感を現わし始めるのが、ヘレボラスいわゆるクリスマスローズだ。庭で鉢で、古葉を残した株の中央からゆっくり新芽が上がり始めるのを見ると、忘れていたヘレボ熱がやおら復活するのが毎年の習い。特に宿根草愛好者にとって、冬の間、観察の対象となる植物はヘレボラスか冬咲きクレマチスぐらいしかないから、この熱はいっそう高くなる。折しも園芸店には園芸種や原種の苗が並び始めて、この魅力的な冬〜早春型植物の新たなコレクションに誘惑する。
 という次第で、今日も一鉢購入。白の八重咲き種で、カタログ価格やネット価格よりかなり安かったので(といっても、花の苗としては十分高い)思わず連れ帰る。気がつけば、これで今季4鉢目のヘレボ。もうこれで打ち止めにしようと心に誓いつつ、次に寄ったホームセンターでまたまた売り場をのぞいてしまうのだから、この季節性の病いは重い。
 そこで見つけた八重のラベルの力の入り具合がなかなか面白かった。「エリザベス・ストラングマン女史育成系統」「半世紀に及ぶ育種の末に作出された至宝の一品」というのがフラッとさせるが、端っこにある「100%近い八重咲き」というのでオヤッとなる。つまりのこの苗は八重を掛け合わせて播種したもので、咲いて見ないと花色も八重かも分らない苗ということになる。そんなのをダブルとしてそれなりの値段で売ってるからには八重率は確かに高いのだろうが、もちろんそうでない可能性もゼロではない。細かく言えば花の質や大きさもきっとばらつきがあるはずで、いわば商品化のための選抜前の株。そんなものを訳知った愛好家だけでなく一般の花好きも買うホームセンターによく卸してるなあと思わないでもなかったが、まあ、いい方に考えれば、どんな花が咲くか、当て物的な楽しみがあるし、よかれ悪しかれ他にはないオリジナルな花になる可能性も高い。売れ残って安くなってるのに期待をかけて、またシーズンの終盤にのぞいてみようとひそかに思う。
 そういえば今季買った4鉢はいずれもミヨシのメリクロン、つまりクローン苗。選抜された美花がそのまま咲くことは確かだが、考えてみればかなり不自然な出自ではある。