金峰山

 さすらい登山第二日は晴天で明けた。駐車場はいつの間にか満杯で、次々に登山者が出発していく。ゆっくり準備をして歩き始めるが、日帰り荷物でスカスカの大型ザックが背中でかさばる。小さなサブザックにすればよかったかな。

 瑞牆山荘の前から道は直ちに山に入る。一部に急登があるものの、全体に適度な登りの歩きやすい道で、富士見小屋・大日小屋と雰囲気のいい小屋が割合短い間隔である。特に大日小屋のテント場はダケカンバの瀟洒な幹に囲まれた良環境。サイトは少ないが、こんなところでのんびりしたら気持ちよかろう。
 道はこのコースきっての花崗岩の大岩塊、大日岩で稜線に出る。さらに進んで砂払ノ頭からは尾根が痩せたリッジになって、一気に展望が開ける。振り返れば瑞牆山がもうずいぶん低く、その向うには八ヶ岳連峰が大きい。その左手には南アルプスの山並み、そして雪化粧した富士山。北岳は白くなっていないから、昨日の南アは大した雪にはならなかったようだ。
 けど登っていく稜線の岩蔭はところどころ白く、岩にかけた足が滑る。大日岩辺りから昨日の融け残りの雪ならぬ霰が見られるようになった。下りの人に聞くと、昨日は痛いほど霰が降って、一面真っ白だったという。なるほどずいぶん粒のしっかりした霰だ。
 登り下りの人が多い稜線を慎重にたどって行くと、金峰山のシンボル五丈岩が見えてくる。こちらからは痩せた姿だが、広々した頂上の台地に登り着いて回り込むと、お馴染みの巨岩のブロックを重ねたようなどっしりした姿になる。朱の鳥居が岩=御神体を祀っている。岩の前の広場にはたくさんの登山者が休んでいる。三角点はこの先、岩塊の堆積を一登りしたところだが、少し登ったところで大岩のテーブルを見つけて腰を下ろす。

 正面に五丈岩を見ながら、湯を沸かしカップ麺の昼食。岩の左には富士山も雲をまといながら見えているし、右には南アルプス、なかなかの特等席だ。風が冷たいので大ザックに穴埋めのために入れてきたダウンを引っ張りだして着る。岩の前の広場には老若男女、幅広い登山者が憩う(あれ、スーツ姿にビジネスシューズの人がいるぞ。これもエクストリーム登山?)。若いカップルやグループも多くて、関西の山よりは年齢層が低いかな。数人の人が五丈岩に果敢にアタックしている。雪のついた岩は登りにくそうだがみごと登り切った人もいる。下から見上げていた人からも歓声が上がる。こんなにキャパシティが大きくて、賑やかなのにゆったりできる頂上も珍しい。
 のんびり過ごすうちに2時間近くが経っている。空身で三角点を往復してから下山の途に。北へ金峰山小屋まで下ってから巻き道で稜線コースに戻る。北斜面の大きな岩塔に寄り添って立つ金峰山小屋もなかなかいいロケーションだ。踏み固められた霰が滑る岩稜コースを下り、大日小屋からは元気な若者や中高年グループの声を聞きながらのんびり高度を下げる。長髪に慎重に選んだらしい色合いの服とザックに尻革(!)、といったいでたちの、チェックシャツとベージュズボンの中高年からは及びもつかないスタイルの大学生たちの後を歩いて登山口に帰着。見どころが多く楽しかった登山を終えた。
瑞牆山荘から金峰山GPSトレース
金峰山山行アルバム