スゼー届かず

 過日ネット古書店でフランスの名歌手、ジェラール・スゼーの「詩人の恋」と「美しき水車小屋の娘」のCDが安くあるのを見つけて喜んで注文した。古書店から発送の連絡があって楽しみに待つも、1週間過ぎても一向に届く気配がない。問い合わせて見ると、確かに発送したから遅配や事故も考えられるが、今しばし待てとの返事。さらに1週間後に届いたメールには、戻ってないし届いてないなら郵便事故で申し訳ないとある。「局に問い合わせていますが、出てきたためしがありません」と度々の経験に諦め顔といった様子だ。もちろん古書店に非があるわけではないので、こちらも諦めるしかなかった。
 CD2枚といえばそれなりの嵩があるはずで、そんなものが消えてなくなるとは何とも不思議な話だ。郵便の包装では感触で中身が分かるから、配送の途中で良からぬ輩がその手のDVDではないかとちょろまかして開け、そのまま捨てられてしまったのではないかとも思う。これまで古本ではついぞなかったことだが、もしかしたらCD/DVDでは事故の頻度が跳ね上がっていやしないか。憤懣やる方なし。それにしても、古書店には当方の不達の申し出をまったく疑う気配がないのはさすがだと思った。多くの古書店が後払いを採用している古本の文化はすばらしい。もしこれが崩れるようなことがあれば、それは日本の読書文化の頽廃を意味するだろう。
 届かなかったスゼーの代わりに同じくフランスのニ世代前の名歌手、シャルル・パンゼラの「詩人の恋」の著作権フリーデータを見つけて聴く。こちらは古色蒼然たる歌いぶりだが、なかなか味わいは濃厚。