黒曜石

 引き続き夏の旅から。
 霧ヶ峰にも久々に行ってみた。松本からよもぎこば林道を経て、ビーナスラインに入る。高原散歩には適さない名前通りの深い霧の中をそろそろ走って、まず立ち寄ったのは旧中山道が越える和田峠。宿場は佐久側に下ったところにあるが、今日の目的はそこではなく峠。ここは有名な黒曜石の産地で、以前、といってもやはり20年近く前だが、簡単にこの火山ガラスの固まりを拾えた。確か旧和田峠トンネルの上辺りでと、車を停めてアプローチを試みるが、藪が茂ってとても近づけない。残念。でも、近くの茶屋には「黒曜石」の看板があって、拾い集めたのを売っているらしいから、どっちみちもう簡単には見つからないかもしれない。
 時移って、黒曜石の原石拾いは難しくなったが、代わりに博物館ができた。それが鷹山の「黒耀石体験ミュージアム」という施設で、ビーナスラインから少し北に下ったところにある。訪ねてみると、そこも星糞峠という黒曜石の産地で、旧石器時代から縄文時代の石材採掘の跡がたくさん見つかっているらしい。その採掘坑の一つが館内に保存(再現?)されている。縄文人たちも積極的な開発者であったことに感心しながら見ていると、博物館はにわかに賑やかになった。バスで大挙やってきた子どもたちが館内の教室で黒曜石のアクセサリー作りを始めたらしい。なるほど、館名の「体験」は飾りではなかったようだ。子どもたちにとっては夏休みのいい思い出だろう。
 博物館の裏山を星糞峠に向けて歩けば、今も窪地になって残るという古代の採掘跡を見学することもできたようだが、あいにく雨がぱらつく天気。またいつかと星のかけらが眠る山間の少盆地を離れた。

縄文時代の黒曜石採掘坑

その昔和田峠で拾った黒曜石の原石

割ると完全にガラス質