薮萓草


 庭の片隅で咲いているヤブカンゾウ。日本に生育する原種ヘメロカリスの一つ。こう見るとなかなか派手な花だが、大きさは園芸種のヘメロカリスの半分ほど、花穂は倍ほど高く伸びる。ずっと以前にキャンプに行った滋賀県の愛知川の川原に咲いてたのを抜いてきたもの。さすがに野生種だけあってどんどんはびこって邪魔になり、花壇からは取り除いたが隅っこで生き残って、ヘメロカリスの季節にここにもいるぞとばかりに高く咲く。
 この花、ちょっと変わった来歴の持ち主で、中国原産のホンカンゾウが八重咲きになったものらしい。ホンカンゾウは日本にはなく、なぜかその変種だけが日本に入って野化している。新芽は食用になり、根茎は薬効があるという有用性が海を渡ってこの国に住み着いた理由らしい。留学僧が持ち帰って、花の面白さもあって寺の庭で栽培していたのが、洪水などで広がったのではないかという。なるほどこの株も川原にいた。3倍体だから種はできない、株が移動することで広がる。確かに根茎は旺盛に増えて丈夫な性質だが、これだけ各地に広がっているのはこの花と日本人とのつき合いの長さを思わせる。似たような来歴の植物に彼岸花がある。