クライバーの未完成
買ったままになっていたCDを聴く。最近は「積ン読」だけでなく、「積ン聴く」も多くなって情けない限り。
カルロス・クライバーのシューベルト「未完成」とブラームス第4交響曲と「トリスタンとイゾルデ」のさわりの入った一枚。
一発で背筋が伸びる。アイドリング状態の意識にギヤが入る。激烈かつ緻密。やっぱり、これほど聴くものを刺激し昂揚させる指揮者は他にない。
特に「未完成」には驚いた。こんなにドラマチックで面白い曲だったっけ。これまで茫洋とした草食動物と見えていたものが、クライバーの一鞭で俊敏で強靱な肉食獣の本性を表したという感じ。
強奏の迫力と輝き、全奏の豊潤、弱奏の緊張感、どれもクライバーならでは。以後、他の「未完成」は物足りなく聞こえることだろう。重厚な第4がしなやかに若々しく鳴り響くブラームスとともに、迫り来る暗雲をひととき忘れさせてくれる快演。