伊予松山

 週末は休日割引を使って四国に渡ることに。阿波は近すぎるし、讃岐でうどん店の行列に並んで過ごすのももったいない。ならば土佐の高知か伊予松山。どちらもゆっくり見たことのない城下町だが、松山には道後温泉があり、四国随一の窯業地砥部があってちょうど陶器市をやるらしい。ということで、伊予へ朝9時半に出発して深夜24時に帰着するという弾丸ツアー。以下、要所だけ。
砥部 まずは松山インターから南へ山に向って走り、浅い谷間に広がる焼き物の町、砥部へ。土曜日曜と砥部焼祭というのをやっていて、国道には運動公園の会場に入る長蛇の車の列ができている。先があるので第2会場の伝統産業会館で我慢する。小さめの即売会場で皿・鉢・カップなどを買う。最近はうどん鉢としてよく見る焼き物だが、厚手の磁器に青一色で手描きしたぽってり・おっとりした器はけっこう好み。台の大きなくらわんか茶碗もここが発祥のよう。一つほしかったが、使い道を思いつかずやめる。体育館のフロア一杯に即売が行なわれているらしい第1会場ものぞいてみたかったが、時間がないので断念。
草土窯
松山 松山は古い城下町だが、昭和20年の大空襲で焼け野原になったためか、町並みや寺社には見るべきものはない。ただ城は立派で、平野に聳える比高約100mの城山上へはロープウェイとリフトが通じる。天守閣の規模は小さいが、複雑な構成の美しい石垣と幾つもの櫓が特徴的な城は、ゆっくり歩いて見て回るのが楽しい。それにしても暑い日で、伊予弁の昔話を聞かせてくれるというので櫓の一つに上がると、風が通って涼しく、ホット一息つけた。
 城を下りてからは、県庁のある南側に移動して、東京で評判だったというルドゥーテの薔薇図譜展が巡回してきている県立美術館、モダンなコンクリート打ちっ放しの坂の上の雲ミュージアムを横目に、旧藩主久松伯爵の居館だったという萬翠荘という洋館だけ見学。明治の雰囲気もここにしか残っていない。



道後 最後に道後温泉へ。松山は路面電車がまだ現役の町で、温泉への道にも車とチンチン電車が並走している。線路の石畳とあの響きがあるだけで町がずいぶん上品に見えるから、ぜひ大切にしてもらいたいものだ。道後温泉といえば、レトロな本館が唯一の見どころ。たくさんの人が入浴し周囲にたむろしている。20年ほど前に来たときは、前が自動車道だった記憶があるが、今は自動車は迂回して通り、正面は人が憩う広場になっている。人力車の客を呼ぶ声もしきり。広場につながる商店街で夕食を終えて戻ってくると、本館には灯がともり一層いい風情に。背後の小高い岡のうえの駐車場から、その様子をしばらく眺めてから帰途についた。