文庫本2冊


 これで三千円也(税抜き)。いやはや、文庫本との付き合いも長いが、この程度のボリュームでこんなに高くついたのは記憶にないなあ。星一つが50円ののどかな時代が懐かしい。もっとも、どっちも講談社文芸文庫で、ニッチ狙いの特異な編集方針を堅持するこの文庫のラインアップは、他には高価な絶版古本市場で探すしかないものがほとんどだろうから、この価格設定は甘受しなくちゃならんだろうなあ。これでもたぶん単行本の定価の半額ほどだから、単行本の時はすぐに飛びつくほどでなくても、結局は視野に収めておきたいというような本の場合は、つい手が出てしまう文庫なのだ。
 『白山の水』の注文ついでに手がでた『木山捷平全詩集』など、よくぞこんなの文庫にしたなあという大穴狙いの一冊だが、それが当たってジワジワ売れ続けているようで、13年前の出版以来3刷を重ねている。知る人ぞ知るマイナーポエットの「全詩集」を掌に収まる文庫でそこそこの価格で、というのは確かに本好きの琴線に触れるものがあるなあ。