大暴落

 一時喧しかったサブプライム問題が少し静かになったと思ったら、地下で着々圧力を高めていたマグマが一気に噴出したようにリーマンショック、そしてアメリカ金融界の再編。もちろん世界の市場は強く反応したわけだが、米政府の金融支援策の発表が早かったので、素人目にはこれで一段落するかと思えたのだが、何なんだこのパニックは。
 明確なきっかけがあったようにも思えないのだが、積もりに積もった不安がついに限界に達したということだろうか。みんな一斉に席を蹴って出口に殺到している。逃げ出しながら、椅子をひっくり返し、壁を壊し、柱を崩して、下手をすれば屋根が落ちてしまいそうなほど、自分たちで自分たちの市場を荒らしている。
 結局人間は、データと心理が入り交じり、欲と不安が渦巻く市場というやつをぜんぜん制御できてないということか。テレビでスマートに経済を語るアナリスト諸氏のだれが、この大暴落を予想しただろう。しょせん秀才の知能では理詰めの経済談義はできても、人の心理の混沌は読み解けない。いや、どんな心理洞察の天才にだって市場の明日は読めない。もちろんかつての大恐慌の教訓で、驚天動地の事態には至らない安全弁は用意されてるとしても、片一方できわどいマネーゲームを容認して落とし穴を増やしているんだから、いつまでも恐慌の不安はなくならない。
 人間よ、もうこんなことはやめておけ、と言いたいけれど、粗雑な頭にはそれに代わるシステムなんて考えもつかない。