岩宿遺跡

 考古学少年だった頃からの憧れの地、岩宿をついに訪れることができた。
 甲府盆地から雁坂峠を長いトンネルで越えると秩父。渓谷を成す荒川沿いに下ると、関西人にはとりとめなく広い関東平野に出る。赤城山が近くなり、ようやく風景にめりはりが出てホッとしたら岩宿は近い。渡良瀬川が作った扇状地の要近くに小さな並び丘があって、その間の切り通しが日本で初めての旧石器発見の地。
 今は切り通しの道は自動車道になり、発掘地には記念碑がひっそり建っている。そして、丘に隣接した大きな池を半分埋め立てて、モダンなデザインの博物館が設けられている。閉館時間を気にしながら展示を見て回った。本で何度も目にした岩宿の旧石器が並んでいて感慨深い。地域の最新の研究成果を紹介した展示も目を引く。とくに下触牛伏という旧石器時代の遺跡では、石器とその石屑の出土状況から環状の集落と中央広場の存在を推定していて、柱跡や有機物が一切残っていないなかで、果敢に当時の生活を再現しようとしているのが興味深かった。しばらく見入っていると、学芸員が近づいてきて丁寧に説明してくれる。小さいながら展示の広がりと工夫に、旧石器時代の上毛をトータルに紹介しようという熱意が感じられる好施設だった。
 他にも、野外には復元住居や遺構の保存施設などもあったようだが、急いで奥日光の宿に向かわなければならず、残念ながら時間切れ。いつか再訪できることを願いつつ、切り通しの道を抜けて岩宿を離れた。
岩宿遺跡の現状(拡大)
モダンな建築の岩宿博物館