冷麺

 冷麺が好きである。冷し中華ではない。あの縮れたラーメンの麺にごちゃごちゃ具を乗せて、酢醤油やら胡麻だれをかけたまとまりのないものではない。牛肉で取った澄んだスープに、そば粉を使った弾力のある半透明の麺を泳がせ、キムチの味を効かせて食べる、平壌冷麺とか韓国冷麺とか呼ばれるあれである。
 さっぱりと冷たいスープをベースに、キムチの朴訥な刺激と麺の禁欲的な歯ごたえの組み合わせがベストマッチの、暑い夏にぴったりの麺である。煮抜き卵や錦糸玉子、ナムル、リンゴなどカラフルな具を控えめに乗せても楽しい。阪神間にはいかりスーパーというちょっとハイソっぽいスーパーチェーンがあって、ここに置いてる冷麺セットを時々買ってきて食べる。外でもメニューに見つけたらつい注文してしまうので、いろんな店の冷麺を食べてるはずだが、意外にこれはというのに出会わない。逆にこれならスーパーの冷麺の方がというケースが多いのはどうしたことか。飲食店で供される冷麺のレベルは意外と低い。
 そんな冷麺好きの不満を解消してくれる店に最近遭遇した。灯台下暗し、家から車で10分ほどの有馬街道沿いの焼肉屋である。焼肉の評判を聞いて食いに行ったら、冷麺も美味かった。あんまり美味かったので、今日は昼に冷麺だけを食べに行った。スープの味は少し濃いめだが、酢を少し垂らし辛子を融かすといい味になる。そして麺が絶品。不思議に歯ごたえがコリコリする。こんな麺は初めてである。卵とカルビも乗っていて、昼飯としてのボリュームも十分。きち太郎の冷麺。北区の冷麺好きはぜひお試しあれ。


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