荒れ庭

 手入れをさぼっているうちに、花壇は荒れ放題だ。エノコログサがあちこちで穂を伸ばし、ツユクサがはびこり、植えた花も徒長してのたうち倒れ伏し、通路もまともに歩けない。鋏と手鍬を手に一日這いずり回って始末をすればちょっとはすっきりするのだろうが、この暑さとこの虫である。着手するには覚悟がいる。予想される消耗を前に体がしり込みする。
 思えば、日本のとくに西半分のガーデナーは不幸だ。早い春とうるわしい5月は、毎年花壇作りの情熱を呼び覚ましてくれるが、花を楽しむ間もなく長い雨期がやってくる。高温多湿下で植物は旺盛に育ちつつ乱れ咲いて、早くも春の花壇の構想を裏切り始める。整えるには咲いている花茎を切り詰めるしかないから、手を束ねているうちに花壇の暴走を制する機会は失われる。後は野となれを決め込んでいるうちに、気がつけば本当に庭は荒れ野になっている。3カ月の快楽の後は3カ月の忍耐である。
 西日本の宿根草花壇の最大の課題は、梅雨以降の植物の成長を開花を犠牲にすることなく制御する方法を考案することにある、とつくづく思うこの頃である。