モディリアーニ展


 姫路へひとっ走りして、市立美術館で開催中の「アメデオ・モディリアーニ展」を見てきた。どういうわけだか、同時期にもうひとつモディリアーニ展が、東京・大阪の国立美術館で華々しく開催されているので、作品数で劣るこちらは肩身が狭そうだが、量よりも質、粒選りのいい絵が見られて、それなりに満足できる観展だった。第一、考えてみたら、この画家は印刷では知っていても、実物を見るのは初めてで、この会場では厚いガラスのバリアで隔てられることもなく、ごく近くでその絵に向かい合えたのは有り難かった。
 モディリアーニといえば肖像画もいいが、何といっても裸婦。というのは、若い頃に画集で見て、見ることが触れることに等しいようなトキメキを与える、その肌の表現のあたたかな色合いとタッチに魅せられてしまった覚えがあるからだが、今回、その時最も引きつけられた絵が目の前に現われてきたのには驚いた。それが「髪をほどいた横たわる裸婦」。なんと大阪市立近代美術館が所蔵しているらしい。(件の画集を引っ張りだしてみると、芦屋の個人蔵となっている。後にそれを購入したようだが、その価格がなんと19億余。しかもこの美術館、まだ計画段階で、財政難もあって建設のめどが立っていないとか。聞くからにあきれた話ではある)
 ともあれ、今回何十年かの時を隔てて、モディリアーニの裸婦は、まるで愛撫の手触りと体温と匂いの記憶までを絵の具に封じ込めたような、女へのこの上なく親密なオマージュなのだと、いっしょに行った嫁さんの目を気にしつつ、陶然とけど昔よりは少し客観的に、この絵を眺めながら確認した次第であった。