ハイパーマイラー

 朝、BSのABCニュースを見ていたら、ハイパーマイラーなるものが取り上げられていた。hypermilers、つまり思いっきり節約走行で車を走らせて、走行距離を伸ばすことに情熱を燃やす人たちのことらしい。世界的なガソリン価格高騰の折から、窮境を逆手にとってゲーム感覚でやりくりを楽しんでしまおうという、アメリカ人らしい発想。深刻一方にならずに遊び心を上手に交える余裕がうらやましい。
 ハイパーマイラーの一人として紹介されていたおじさんは、ホンダのハイブリッド車に乗って、ただでもいい公称燃費の、その倍ほどの走行距離を叩き出してしまうらしい。いろいろ蘊蓄を言っていたが、要するに乱暴なアクセル操作は控えて、できるかぎり惰力走行の時間を伸ばすということに尽きるのは誰にだって分かる。
 ミニバンというかさばって重い車に乗っているので、鼻からハイパーマイラーの資格はないが、逆に悪い燃費を少しでも改善しようと、事あるごとに惰力走行を心がけているのは、一銭でも得することを喜びとする大阪人の血のしからしむる所か。神戸に出る時によく使う山麓バイパスという長いトンネルがあって、料金所を通過すると後はずっとごく緩い下り坂になる。一気に加速して後はニュートラルで走れば出口までその速度で省エネ走行することができるから、ひそかな節約の喜びとともに毎度これをやっている。いつぞや、嫁さんが運転している時に、横から手を出してニュートラルにしてやったら、えらく怒られた。そんな走り方は彼女にとって不安でたまらないらしい。下り坂なのにアクセルを踏んで走ることの不合理を説いても納得しない。まったく婦女子は度し難い。
 ちなみにBSの同時通訳では、ハイパーマイラーを燃費オタクと訳していたけれど、偏執的な感じが出てその方がふさわしいかもしれないな。hypermilersはかっこよ過ぎ。