成都書事
劔南山水 盡く清暉
濯錦江邉 天下に稀なり
烟柳 樓閣を遮り斷ぜず
風花 時に馬頭を逐って飛ぶ
芼羹の筍は稽山の美に似て
斫鱠の魚は笠澤の肥の如し
客報ず 城西 園の賣る有りと
老夫 白首 歸るを忘れんと欲す
『だが詩人は蜀(四川)の地方を愛していた。のちに自らの詩集に、蜀の別名をとって「剣南詩稿」となづけたのもそのためである。ここには何よりもまず敵地を前にしての緊張感があった。そして蜀は物産の豊富な土地であった。またここは険阻な山々にとりかこまれていた。詩人は細やかな感情と日常の微細なものへの鋭い観察眼をもちながら、一方スケールの大きい豪華で豊富なものの愛好者でもあった。またここは彼が最も敬慕する詩人
杜甫の放浪の地でもあった。その古跡を訪れて
杜甫の
憂国の情を
追体験することは、蜀における
陸游の一つの仕事であり慰めでもあった。』「
陸游−中国詩人選集二集」
一海知義