冤罪

 名画揃いの裏番組をあきらめて見た「それボク」。いやあ、面白い映画だったなあ。身につまされる映画でもあった。女弁護士も言ってたっけ。「男にはみんな動機があるのよ」って。若い女が嫌いな男なんて、この世には少ないから、ギュウギュウに混み合った電車に乗る男たちに、痴漢になる可能性は皆無ではないし、女たちはそれを知っているから、痴漢と疑われる可能性もゼロではない。電車に乗る時、両手をホールドアップでもしないかぎりね。そして、運の悪い男が落とし穴に落ちたら、今や警察の痴漢被疑者への対処は一方的で、犯人創作システムは容赦ない。さらに、裁判所の容疑者に対する見方・考え方は、警察・検察にきわめて近い。それらのことを実にリアルに教えてくれた映画。
 で、映画自体への感想。母親たちが決定的とも思える目撃者の女性を探し出してきた時は、これで一件落着と安堵する一方で、ずいぶん分かりやすく安易な解決を選んだなと、少し見くびったのだが、みごとに裏切られた。裁判官小日向文世のいつもどこかに笑みを含んだような表情が、かえって悪魔的で実に効果的だった。完全に一本とられた。