「勇気ある追跡」・アスペン


 一昨日、BS2のアカデミー賞特集でやっていたジョン・ウェインの「勇気ある追跡」は、ちょっと見入ってしまう映画だった。いや、ドラマにではなく、次々に写し出される北米の風景のみごとさにだ。西部劇なのにメサとサボテンというおきまりのウェスタンのイメージを捨てた舞台設定で、見るシーン見るシーン、美しいロケーションの方に目が行ってしまって、筋立てどころではなかった。特に印象的だったのが、白い真っ直ぐな幹を連ねたアスペンの森。日本の美林の代表がブナ林なら、北米のそれはこのアスペンの森なのだろうとちょっと感動してしまった。
 見終わってから調べてみたら、さすがにアメリカ人も感じるものがあったようで、「John Wayne in True Grit, Then and Now, Extended Video」というのがYouTubeにあるのを発見。「True Grit」はこの映画の原題で、約40年前に作られた映画のロケ地をたずねて、ほとんど変わっていない風景を報告した映像だ。最初はロケに使われた古い建物が残る町の様子だが、その後はアスペンの森やバックの山並みを丹念に追っている。キャパシティたっぷりの国土だから、当然といえば当然なのだが、あの沢が流れるアスペンの森もまるきりそのままだ。
 ところで、アスペンといえばまず思い出すのが、アンセル・アダムスこの写真で、森の暗がりをバックに白い幹を浮かび上がらせた白黒写真はなお新鮮だが、今ではインターネットを探すとアスペン林の魅力をもっとリアルに伝えるカラー写真にたくさん出会える。白樺以上に白い幹の連なりはほとんどお伽の世界だ。
 アスペンはヤナギ科ポプラ属の一群の木の総称で、日本に自生するヤマナラシもその仲間らしい。北米の白い幹のアスペンは学名Populus tremuloidesで、Quaking Aspen とか Trembling Aspenと呼ばれるのは、丸っこい形の葉がわずかな風でも細かく揺れ動く特性があるから。学名のtremuloidesもトレモロだろう。Wikipediaにはアスペンが震えるビデオも納められている。日本のヤマナラシも「山鳴らし」で、よく風に葉が揺れてさらさら鳴る様から来ているという。六甲にもたくさんあるようなので、いつか探してみよう。あんな美しい木ではなさそうだが。