逸翁美術館

 摂津池田の逸翁美術館に「蕪村・呉春展」を見に行った。蕪村では謝寅時代の日本的な南画「青緑山村居図」と「万竹林書屋図」の2幅、弟子の呉春では「山中採薬図」という大胆かつ稠密に線を重ねた絵が面白かった。呉春はその後、円山応挙に接近して、南画から流行の写生画に鞍替えしてしまうのだが、「採薬図」の迫力を見ると、このまま南画の表現主義で押して行った方が面白かったのではないかという感想も浮かんだ。それにしても、蕪村の俳画はいいなあ。絵も味があるけど、それ以上に丸っこくて柔和な文字の姿が、蕪村が呼吸していた江戸中期京阪の文化の穏やかな洗練と自己充足を感じさせて、うっとりと見入ってしまう。その師の絵と書を、呉春の俳画がそっくり真似ているのも微笑ましかった。
 ところでこの美術館、阪急の創業者小林一三の邸宅だったという建物も魅力の一つになっているが、来年新築移転するとかで、阪神間モダニズムを感じさせるこの建物が美術館として利用されるのは今回が最後だという。もう訪れることもないだろうなと、よく手入れされた庭に出て写真を撮った。
正面
庭から