ファーブル昆虫記

 BShiで昨夜から3夜連続でファーブル昆虫記をめぐる番組をやっている。昆虫記を翻訳している奥本大三郎が南仏にファーブルの故地を訪ね、昆虫写真家の海野和男がファーブルの観察を最新の映像技術で追いかける。特に糞虫好きの自分としては、昨日のミヤマダイコクコガネの映像(世界初と言っていた)が感動的だった。
 昆虫記で一番熱心に読んだのは、聖たまこがねとイスパニアだいこくこがねの章で、特に神経質なたまこがねを相手に、ファーブルが工夫を凝らしてその驚くべき糞玉作りと産卵の秘密を明らかにしていく部分は、ワクワクしながらページを繰ったものだ。また収められていた何葉かの写真も素晴らしく、たまこがねが作り上げた糞玉のみごとさには驚いたし、だいこくこがねが糞玉にていねいに産卵床を作っているこの写真には、あこがれの虫だったこともあり、何度も見入ったものだ。

 このイスパニアだいこくこがねと近縁の日本のミヤマダイコクコガネの糞玉作りと産卵の様子が、今回、鮮やかな映像で捉えられたのだから、何十年かの時間を挟んでまた見入らないわけにはいかなかった。そして、ファーブルが昆虫記で書いたのとそっくり同じプロセスを、日本のダイコクコガネも踏んでいたのには感動しないわけにはいかなかった。
 ミヤマダイコクコガネの夫婦は糞の下に巣穴を掘り、大きな糞のパンを溜め込んで、しばらく発酵させる。それを何等分かにして幼虫用の糞玉を作り、その一部を掘り窪めて卵の部屋を作り、洋梨型の完成品に仕上げる。そこで仕事は終わりかと思いきや、母親は巣穴に何カ月も残って梨玉を見守り、外敵から守り、子どもの孵化を待つのだ。健気なダイコクコガネ! 姿も生態もなんと魅力的な虫だろう。その虫と心ゆくまで付き合い、小さな生き物の精妙を説いたファーブル昆虫記の魅力も褪せていない。