呑吐ダム


 昼は犬をつれて近くのダム湖畔を散歩。堰堤を渡って、周回路をミツバツツジと新緑を楽しみつつ少しだけ歩いて、また戻る。呑吐(どんと)ダムというおかしな名は、堰堤が扼しているかつての深い岩がちな谷に由来しているらしい。今はもちろん全部水底で、そんな名勝があったことを想像することもできない。わずかに『丹生樵歌』に収められた山田翠雨の詩から偲ぶのみ。
  呑吐を過ぐ
 路は澗中に入って 風氣腥し
 蜿蜒 恰かも巨蛇の横たわるに似たり
 飄蓬 地に随ってあつまり相い逢い
 流水 岩に触れて蹙みまた行く
 落木 山寒くして潛鬼哭く
 奔湍 壑応えて怒雷鳴る
 人言う 潭底龍宮近しと
 澄碧玻璃 骨に徹して寒し