大阪繁昌詩


 最近少しずつ『大阪繁昌詩』下巻の入力をしている。巻の上を[書庫]にアップしたのは2002年だから、ずいぶん悠長な話だ。文久2年に19歳で夭折した田中金峰という青年儒者が16・7歳の頃に作ったという大阪の名所記で、名所ごとに七言の絶句を作り、文を付す。寺門静軒の『江戸繁昌記』に習ったものだが、残念ながらあの書の破天荒な面白さには遠く及ばない。漢語と俗語のチャンポンが生む強烈な笑いもなければ、リアルな描写のイキイキしたエネルギーにも欠ける。ただし、和漢の典籍に淵源や異名を探したり、先人の詩を豊富に引用したり、博捜ぶりはなかなかのものだ。道学者流の口吻や国粋的な言辞が鼻につくが、書誌学的勤勉さは早熟の秀才の作と言っていいのではないか。まあ、頭でっかちのこまっしゃくれた本なのだが、時に少年らしい柔らかな観察が混じったりするのを楽しみに入力している。春にはアップできるだろうか。