Google Earth

 先日のGoogleについてのNHKスペシャルでは、Google支配の問題点を教えられるとともに、あらためてGoogleが実現してきたもののスゴさを実感させられたのだが、その一番分かりやすいイメージとして番組で多用されていたのが、Google Earth。地球上のあらゆる場所の詳細な衛星地図を簡単に表示できるサービスだ。衛星画像は特にスケールの大きな地形をリアルに確かめたいときに最も有効で、自分のような火山マニアにとっては願ってもないサービス。というわけで、思いついてアジアにある2つの最大の火山地形を探してみる。
 一つはタンボラ山インドネシアのスンバワ島にある火山で、1815年の爆発は有史最大と言われている。吹き上げられた噴出物で太陽光線が弱まり、翌1816年は世界各地で記録的な冷夏となり、「the year without a summer」と呼ばれたということだ。みごとに丸いクレーターとその底に溜まる複雑な鉱物色を呈した湖が、いまも実になまなましい火山だ。
 もう一つはトバ湖。同じくインドネシアスマトラ島北部にある琵琶湖の1.5倍ほどの面積の湖だが、これが実は世界最大のカルデラ湖なのだ。阿蘇がよく世界最大級のカルデラなどと言われるが、このトバ・カルデラとくらべると面積は3分の1ほどしかない。とにかく途方もない大きさのカルデラで、74000年前の噴火で形成されたものだというのだが、その噴火も破局的なスケールのものだったようだ。ウィキペディアには、「同時期に、ヒトDNAの多様性が著しく減少する『ボトルネック(遺伝子多様性減少)』が見られることから、この噴火で当時の人類の大半が死滅したという説もある」という記述が見られる。これを「トバ・カタストロフ理論」というらしい。いまは一見何の変哲もない湖が、かつて人類を根絶やしにする可能性をもった大災厄の元凶となった場所だったのだ。そんな来歴を知りつつ、現在の地形を、昔は神にしか許されなかったような巨視的な俯瞰で見るのは、ほとんどめくるめく体験じゃなかろうか。