兵庫県立美術館

 ついでがあって、脇浜海岸の県立美術館に立ち寄る。以前、王子動物園前にあった県立近代美術館に代わって、2002年に開館したもの。安藤忠雄設計のこのモニュメンタルな建築を見るのは実は初めて。周辺は、震災で川崎製鉄などが撤退した跡地を利用した、HAT神戸と総称される再開発地区で、防災関係の公共施設とともに、震災復興の公営団地も立ち並んでいる。建物は、これまで幾つか見た安藤建築のなかでも見応えのあるもの。常設展の方はまたそのうちということにして、外構をゆっくり見て回るだけで、小1時間ほどを費やす。六甲山を背景に、また海浜の開けた空と水に向かって、幾つものシャープな空間が構成されている。いつもながらに絵になる建築。けれどこの場所の性格を考えると、これが果たして、安住のすみかを追われて、無機的な団地で暮らす人たちの癒しと励ましの空間になるかは大いに疑問だ。コンクリートと鉄の大規模建築にそれを期待するのが、土台無理な話かもしれないが。