川瀬巴水展カタログ


 以前から探していた川瀬巴水展の図録をようやく入手。1990年に山梨県立美術館が開催したもの。図録としては高めの値段がついていたのだが、届いてみると意外にボリュームがない。カラー200図とあったので、それなりに大部のものと考えていたら、1ページに4図も押しこんだりしている。去年各地で開かれていた巡回展のカタログとよく似た作り。これでは巴水版画の魅力を堪能というわけにはいかない。こんなことなら、手頃な巡回展のカタログで手を打っておくんだったと小さく舌打ち。
 広重以来の叙情的な風景版画の歴史の、最後の夕映えといった存在である川瀬巴水の人気は最近うなぎのぼりだが、その絵を気軽に楽しもうと思っても適当な画集が見当たらない。どうも外国での人気が先行した画家らしく、アマゾンではKawase Hasuiで検索した方がたくさんヒットするからおもしろい。海外ではしっかりした画集やアートポスターも出ていて、母国よりもよっぽど“新版画”が身近な感じだ。まだ著作権は切れていないはずだが、気前よく作品画像を並べている浮世絵商のサイトもあって、けっこう画集の代わりになりそう。
 今年は巴水没後50年の年。大規模な回顧展が開かれて、しっかりしたカタログが作られることを期待したいけれど、そんな動きは残念ながらなさそうだ。