すずらんの湯

 風呂釜が故障してしまったので、はじめて近所の立ち寄り湯に出かける。800円と少し高めだが、施設はなかなか豪華。裏山に面した広い庭には数種の露天風呂があって、なかには五衛門風呂風の大きな甕を置いた一人風呂も。ざぶんと浸かるとなかなかいい気分だが、足が少々窮屈。出てから娘にそういうと、足は外に放り出して入るのだという。実は自分もそうしていたのだが、あまり若い女の子にしてほしい格好ではない。湯が少々カルキ臭かったのが残念。まあ、沸かし湯の循環風呂だから、塩素投入は不可欠なのだろう。
 山の帰りには必ず立ち寄り湯で汗を流すので、この手の施設にはちょっとうるさい。設備の充実度と湯の良さの両方で満足できる施設に出会えることはめったにない。これまででベストワンは、3年前の秋、南アルプス聖岳から易老岳まで2泊で歩いた帰りに立ち寄った、南信濃村の「かぐらの湯」だろう。純度も濃度も抜群の湯で、浴室に入ったとたんパワフルな湯の香に圧倒されたことを思い出す。その湯がもうもうと湯気を上げて滝のようになだれ落ちる、豪勢な打たせも外には設えられていた。稜線で初雪にあって冷えきった身体には、感動ものの温泉だった。